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特集 道と景観を考える

【vol.15】 美しい景観、道の演出、競争力… 地域の道と景観のあり方を探る

 道守九州会議の設立から4年目。道を舞台とする道守会員の活動、日本風景街道への取り組みは、地域の道づくり・景観づくりに大きな役割を果たしています。この夏、道と景観をテーマとするシンポジウムが福岡、大牟田、鹿児島で開かれました。地域における道のあり方を考えるためのヒントとして、その一部を紹介します。

道と景観・美しいニッポンをデザインする講演会

美しい景観づくり
“引き算の美”から

―コシノ氏

コシノ ジュンコ氏(ファッションデザイナー)

 景観づくりをファッションデザインの観点から考える「道と景観・美しいニッポンをデザインする講演会」が7月27日、福岡市・天神で開かれ、約200人が参加した。コシノジュンコ氏による講演「ファッションと景観の創造」とトークセッション「美しい景観・ニッポンをデザインする」から、日本風景街道戦略会議のメンバーも務めるコシノ氏の、景観づくりへの独自の視点が示された。


講演

ファッションと景観の創造
コシノ ジュンコ氏(ファッションデザイナー)

 デザインの基本は整理することです。日本の道路では広告看板などの規制もなく、さまざまな色が使われていて一貫性がない。パリの高級ブランドが並ぶアベニュー・モンテーニュでは、テントや看板のメッセージに色は使わず、ブランド名はロゴではなくフルネーム表記です。ファッションとはライフスタイルや町並みの美しさにも通じること。今や日本は車社会といえますが、歩くことで美しい景観が見えてくるのでは。日本にもちょっとした工夫で美しさや和やかさを醸し出している通りや道があります。自分の国、町だということを忘れずに、歩きたくなる町並みにしようという意識を持っていきたいですね。


コシノ ジュンコ
大阪生まれ。文化服装学院デザイン科卒業。同校在学中に装苑賞を受賞。1978年パリコレクションに初参加。85年中国・北京、90年米・ニューヨーク、94年ベトナム・ハノイ、96年キューバなどでショーを開くほか、北京の中国歴史革命博物館でデザイン展を開催。2006年には「イタリア連帯の星」カヴァリエーレ章を受勲。オペラやミュージカルの舞台衣装からスポーツユニホーム、インテリアデザインまで幅広い分野で活躍中。


トークセッション

“引き算の美”で景観づくり

活発な意見交換が交わされた
活発な意見交換が交わされた

玉川 コシノさんは、景観づくりにも日本独特の”引き算の美“が必要だとおっしゃっていますね。日本の道路の広告看板はそういう観点ではいかがでしょう。
コシノ 日本の看板やのぼりは異常ですね。それとまだまだ電信柱と電線が目立ちます。それらを取り外すだけで、随分すっきり美しい風景になると思います。
中村 引き算の美学という意味では、福岡の都市高速道路の百道付近を一部地下に埋めたのが素晴らしい。街と海の雰囲気を壊していないですよね。さらに都市景観を考える上では川が重要です。川と都市の間に堤防がない、あるいは低い場合、美しい遊歩道を作ることができます。福岡市はそれが可能です。
玉川 都市景観に対する市民意識を高めていくためには、歩く「人の道」が大切だとコシノさんは話されました。
鈴木 パリのアベニュー・モンテーニュの広告のルールはとても成熟している。日本でも景観を損なわない良心と美意識を持てるといいですね。
コシノ ニューヨークもパリも夜でも歩きたくなるのは、ウインドーショッピングできるから。ウインドーのコンテストがあって競争することもあり、まず飾り方がきれい。野菜もアートのように飾られている。とてもすてきだなと思います。西洋の合理性に日本の伝統的な考え方を取り入れられれば素晴らしいですよね。


パネリスト コシノジュンコ、鈴木弘之(写真家)、中村良夫(東京工業大学名誉教授)
コーディネーター 玉川孝道(西日本新聞社特別顧問)※敬称略


道守かごしま会議 道守&風景街道シンポ

地域資源、人の温かさ、広域ルート…
豊かな道の演出方法を探れ

―玉川氏

4地区の演出方法を探ったシンポジウム
4地区の演出方法を探ったシンポジウム

 道守かごしま会議による座談会&シンポジウム「道守がつなぐ日本風景街道」が8月23日、鹿児島市で開かれ、道守会員や行政関係者ら約280人が足を運んだ。日本風景街道のモデルルート「錦江湾あったまる〜と」の基で、沿道景観や歴史、文化など、地域の資源を活かす、官民協働の地域づくりを探った。
 基調講演には、日本風景街道戦略会議の委員を務める玉川孝道氏が登壇。
 かつての観光地の盛衰、団体行動から個人の趣味中心への旅行スタイルの変化など、国内外の事例を挙げ「道は”造る“時代から”使う、生かす“時代になった。今ある豊かな道をどのように演出するかが、日本風景街道の醍醐味」と強調。
 また、九州の他のモデルルートの取り組み状況などを紹介し、「いかに都市部から人を呼べるかがカギ。風景、歴史、文化、食など素晴らしい資源を備えた鹿児島でも官と民が一緒に汗をかき、風景街道づくりに努めてほしい」と訴えた。
 シンポジウムには、「錦江湾あったまる〜と」に携わる4地区の代表者らが出席。街の入り口にある看板広告の撤去、食をテーマにしたおもてなし、海岸の景観、「まちの駅」を活用した事例が報告され、今後の活動について意見交換。「人の温かさは地域の一番の宝。風景街道づくりに生かすべき」「霧島から奄美大島、種子島、屋久島までを含めた広域ルートづくりも必要では」などの意見があがった。

玉川委員の基調講演
玉川委員の基調講演


シンポジスト
福島大輔(桜島ブロック長)、松元潤平(鹿児島ブロック長)
今林重夫(指宿ブロック長)、下津公一郎(南薩ブロック長)
コメンテーター 玉川孝道
コーディネーター 中村朋美(アナウンサー)※敬称略


 

シンポジウム「話そう大牟田」 

特色ある地域発展を
有明海沿岸道路活用し、
競争力高めて

―大石氏

基調講演する大石久和氏
基調講演する大石久和氏

 福岡県大牟田市で7月8日、有明海沿岸と大牟田市の地域再生策を考えるシンポジウム「語ろう 大牟田」が開かれた。基調講演した日本風景街道戦略会議委員の大石久和氏(国土技術研究センター理事長)は、「どう描く 地域のグランドデザイン」と題し、来春一部開通する有明海沿岸道路を活用した地域活性化策などを述べた。

基調講演

どう描く 地域のグランドデザイン(要旨)

 私たちの地域はどのように変わろうとしているのか。どういう役割を果たそうとしているのか。どういうインフラがそれを応援するのか。こうしたものを書く国土形成計画を初めて定める年になった。
 以前の全国総合開発計画時代には考えられなかったことが起きている。人口減少と少子高齢化、経済の停滞と財政制約、それに東アジアの経済的台頭だ。こうした時代の要請に対応した新たな国土計画が必要になった。
 計画の考え方の一つが、競争力のある地域が集まって競争力ある日本をつくるということ。福岡県が日本の競争力を高めるのに貢献しなければならないし、有明圏域は福岡県が競争できる状態になるよう貢献しなければならない。
 それに向け(来春一部開通予定の)有明海沿岸道路をどう生かすか。まず長崎自動車道や九州自動車道と、どのように結び付くかが非常に大事になる。また、一般的に工場立地は高速道路のインターチェンジ周辺に集まっているが、交通条件の改善を企業立地の促進に結び付けてほしい。
 今後は、福岡県太宰府市から有明海沿岸地域をぐるりと周遊しても3時間で回れるエリアになる。大変便利なエリアになるということは、人を吸収できる能力を身に付けることだが、逆に吸収される機会も増えるということだ。
 この地域が持つ生産性や気候風土、技術力を生かす工夫をして、特色ある地域発展を遂げてもらいたい。

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