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トップ > 私の好きな道 > 知恵と工夫、助け合いが心地よい、坂道暮らし
私の好きな道
【vol.14】 知恵と工夫、助け合いが心地よい、坂道暮らし 長崎市
牧 圭子
長崎は、急傾斜面の住宅地が多く見られる全国的にもめずらしい街です。隣の家に行く横の道がないため、いったん下の車道まで降りて、隣の家へ縦に伸びる坂道を登り直さなければならない場所もあります。「畑のあぜ道が道になり、両側に家ができた」という成り立ちを聞いたときには、なるほど、と驚いたものです。 私は、高齢者のお宅を毎日訪問する、ケアマネージャー(介護支援専門員)の仕事をしています。事務所のある立神地区は狭い坂道と、多い所では200段ほどの階段道が続きます。登るたびに刻々と変化する眼下の風景。「家に来るとに、大変かもんね。汗をかいたやろ」。細い道を息切らし登っていくと、利用者の方が満面の笑顔で迎えてくださいます。 腰痛や膝痛のあるお年寄りは、一人での坂道や階段の昇降が困難。通院などの外出には、ヘルパーさんたちのおんぶ、車椅子ごと抱えての昇降が必要です。夏の暑い日や道が凍る冬場の昇降は、特に危険が伴うため、男性ヘルパーさんは大活躍しています。 狭い坂道に家屋が密集しているため、火災も深刻な問題です。町内の「婦人防火クラブ」は坂道でバケツリレーの練習をして、初期消火に備えています。こうしたお付き合いが、斜面コミュニティを形成しています。お互いが助け合うことで、地域の住みやすさを作り出しています。 大浦地区には2003年に全国初の公道としての斜行エレベーター「グラバースカイロード」ができました。徒歩しか交通手段のなかった地域の人々にとても喜ばれています。モノレールや動く歩道などの安全で快適な「斜面交通機関」は、これからの坂道暮らしに欠かせないものになるでしょう。 人々の知恵と工夫、助け合いで築きあげた坂道の暮らし。上り下りは大変ですが、坂道でなければ得られない、眺望と日当たり、夏場の風通しの良さがあります。長崎へ来た15年前は私を驚かせた道でしたが、今は私の大好きな道です。暮らしを支える行政には、もっともっと知恵を絞ったハード面の支援を期待しています。
【プロフィール】 牧 圭子 長崎市在住。道守長崎会議会員。ケアマネージャー、薬剤師として地域の医療活動に関わる中で、道のバリアフリーの在り方について考えている。