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私の好きな道

【vol.9】 蓮の葉が広がる堀端、城跡の景色 都会の喧噪を忘れる福岡城址の道

大貝 知子

蓮の葉が広がる堀端、城跡の景色 都会の喧噪を忘れる福岡城址の道


私が初めて道を意識したのは、幼稚園のころに住んでいた今泉1丁目(福岡市中央区)だろう。今泉は今でこそ若者の人気スポットだが、当時はところどころに馬糞が落ちている狭い道で、紙芝居やポン菓子屋がやって来る私たちの格好の遊び場でもあった。通りは今でも残っており、狭さ故の楽しさが凝縮した思い出の道である。

今、一番好きな道と言えば、福岡城址の舞鶴公園から赤坂へ通じる道だ。特に蓮の葉が広がる堀端では、ピンクや白い花が咲く頃は清々しい香りが漂う。歩道を走る自転車が煩わしければ水際に降りるのも良い。巨大な鯉やアメンボを目にすることができ、都会の喧噪を忘れてしまう。

蓮の葉が広がる堀端、城跡の景色 都会の喧噪を忘れる福岡城址の道 路線バスが六本松から護国神社の森を回り込んでこの道に入ると、急に車内が明るくなる。道には高い建物がないので、とにかく空が広くて明るい。濃い緑や城跡の景色が車窓に広がり、楠などの巨木達が圧倒的な存在感を誇示している。暑い夏に木陰を広げる涼やかな姿も、雨に煙る姿も、雪化粧で白く変わった姿も、眺めると不思議な幸福感が湧き上がる。でも、緑が多く建物が少ない分、夜の一人歩きは避けた方が無難だろう。

昨年の秋、福岡高等裁判所東の堀が赤土で埋め立てられたのには驚いたが、水鳥が運んで来た珍しい水草が大繁殖した結果なのだそうだ。鳥や自然がおりなすドラマも広がっている。

舞鶴公園地図 ただ唯一、桜の季節だけは赤坂に近い堀端は嫌いな道に変わる。2年前に、桜と柳の並木に替わって、暑苦しい濃いピンクの八重桜が植えられたからだ。桜に寄せる日本人の感性が欠如した人が決めたのだろうか。見るたびに怒りがこみあげる。道の景観を語る時、街路樹にもっと目を向けるべきだろう。建物や看板などは不思議と慣れても、緑や自然は常に人の意識に迫ってくるものだから。

 

蓮の葉が広がる堀端、城跡の景色 都会の喧噪を忘れる福岡城址の道


大貝 知子

【プロフィール】
(株)大貝環境計画研究所
代表取締役社長(一級建築士)。九州大学博士(人間環境学)。

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