
春のゴールデンウィークの頃には目にも鮮やかなグリーンが広がる |
西原村のシンボル俵山(1095m)は阿蘇カルデラの南西部に位置し、阿蘇南外輪山の中でも人気の山である。米俵を重ねた姿に似ていることから俵山と名がついたそうだ。
春には若葉が目にまぶしく、夏には山々の間を抜ける風が草や木々の香りを運び、秋にはオミナエシなどの草花が可憐に咲く。冬の野焼きの頃には、阿蘇の山々が炎に包まれる神秘的な風景を見せてくれる。
その俵山の峠を越える道が私は好きだ。ただ、その穏やかな風景に反し、越えるのは大変である。初心者マークの車にはちょっと厳しいヘアピンカーブが続き、車同士がやっとすれ違えるような狭い箇所がいくつもある。土日ともなると渋滞をまぬがれない道だったが、2年前に西原から南阿蘇村方面に抜ける俵山トンネルができてからは車も減り、静かに自然を味わえるようになった。

俵山からのぞむ壮大な風景。時を止めてずっと眺めていたい |
西原村側から草原の道を車で登り始め、まずおすすめは扇坂展望所。360度のパノラマが広がる。お天気に恵まれれば、熊本市内はもちろん、遠くは長崎や雲仙、さらにはきらめく有明海をも見渡せる。夕陽と夜景の名所としても名高い場所である。地球が丸いことを再確認したあとは、次の絶景ポイント・俵山峠展望台に向かう。ここでもまた感動的な風景が待っていた。眼下に静かに広がる南郷谷。太陽から降り注ぐ光が放射状に緑の大地に伸び、空と地上を結んでいる。地上の隅々までいきわたる大自然の愛情を感じ温かい気持ちになる。
このままずっと眺めていたい気持ちを抑え、南阿蘇村に向かい下り始める。ここからの道もまたすばらしく、特に秋には太陽とすすきが折りなす幻想的な風景が広がる。昼には太陽の光を受け、一面銀色に輝き、夕陽に染まる頃には黄金色の海の風景を見せてくれる。
この道は私にとって、レジャーというよりも、自然に飢えたときや人生の節目に訪れたい大切な道となっている。雄大な自然が元気や勇気を与えてくれるとともに、生かされていることへの感謝の念を思いおこさせてくれる道なのである。
【プロフィール】
大阪府生まれ。熊本市育ち。東京女子大学卒。東京で約20年にわたり、教育・環境に関するボランティア活動を続ける。その後熊本に戻り、故郷の宝を掘り起こす活動に目覚め、道守くまもと会議事務局、道のフォーラム実行委員、くまもとの道を語る女性の会など、に所属。情報誌やホームページを通して地域の宝を紹介する活動も展開中。