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交響の道を行く 新街道風景

【vol.17】 篤姫ブームも後押し 薩摩路はいま、「燃ゆる思い」溢る

  いま、鹿児島の街道筋が熱い。九州最南端から日本風景街道に名乗りを上げているだけではない。道守交流会「道づくし」開催県だから現地道守たちは秋に向けて準備に大わらわ。加えて「篤姫」ブームが後押し―誰もが道の過去と未来を熱っぽく語る。

篤姫ブームも後押し 薩摩路はいま、「燃ゆる思い」溢る

「歴史を知れば路地まで好きになる」

人であふれる指宿・今和泉の路地
●人であふれる指宿・今和泉の路地

 JR指宿線薩摩今和泉駅から10分ほど東に歩けば錦江湾、桜島が迫る。海岸線に並行する小さな路地がいま、人・人・人のラッシュ。休日ともなれば、すれ違うのも互いに気遣い合うほどだ。
 篤姫ゆかりツアーの路地歩きだ。関西・関東、ときには北海道など遠来が多い。1日千人を超える日もあるという。ここ指宿市今和泉は篤姫の生家・今和泉島津家の領地だった。篤姫自身はこの地で暮らしたかどうかは不明だが、代々の墓地や別邸などが残る。春近まれば南への憧れが高まり「やっぱり暖かい」と来訪者の声しきり。その笑顔は、1月の菜の花マラソンに続く指宿の新しい道風景となった。

観光協会の原さんと地元の主婦たち
●観光協会の原さんと地元の主婦たち

 「篤姫ブーム前は何の変哲もない田舎道でした」と市観光協会の原幸一さん。NHK大河ドラマ化が決まると、地元の主婦たちを中心に勉強会・ボランティアガイド講習が始まった。「歴史を勉強したら住んでる所が好きになり、路地までいとおしいです」と主婦ガイド。女性組織「今和泉だごの会」はみやげ物を担当。案内や売り声が弾み、表情は輝き、若い。駅前に立っていると下校時の女子高生たちが「こんにちは」と、次々に明るく声をかけてくれる―現代の篤姫たちだ。

桜島を丸ごと博物館に、風景街道に

わが胸の燃ゆる思いに比ぶれば 煙はうすし桜島山  平野国臣

桜島ミュージアムの福島さん
●桜島ミュージアムの福島さん

 桜島は、篤姫がそうであったように鹿児島人の心象の中心にある。平野は燃ゆる思いを歌に託し、画家・田崎広助は桜島を描き続け、多くの人が語り、書き続ける。確かな遠景。だが実は、いま桜島そのものが熱い。人々が熱い。
 「桜島を丸ごと博物館に」を旗印に掲げ多彩な活動を展開するNPO法人・桜島ミュージアム。理事長の福島大輔さんは地質学が専門の鹿児島大非常勤講師でもある。廃業したホテルを借り受けて「まちの駅」に仕立て、ここを拠点に、例えば桜島芸術村を開催。アトリエや展示場の提供だけでなく、空き部屋自体の絵画化などと活動は自在。その他、太平洋戦争時に桜島で暗号電文解読を担当した作家・梅崎春生の小説「桜島」の再評価と文学碑建立。大小の各種取り組みは既に100回に及ぶ。

住民たちが敷いた石畳
●住民たちが敷いた石畳

 専門柄、福島さんは溶岩群・火山灰が覆う桜島の道の険しさも語る。かつて住民は自ら石畳を敷いた、いつも鍬を持ち道普請しながら道を通った、通行の不便さが島の南北格差を生んだ、と。「人・モノの行き来、道は島の生活と歴史に直結」と力説し、「だからこそ」と、いま風景街道に奔走する。「ここのきり通し斜面は溶岩塊。コンクリートを代えてもらった」と福島さん。

保存会が立てた看板
●保存会が立てた看板

秋、道守集い「道づくし」

 新しい日本風景街道づくりの一方、参勤交代の道・薩摩街道や美しい武家屋敷が続く知覧などで旧街道の検証・保存・活用の取り組みも活発だ。
 往時は出水筋などと呼ばれた旧薩摩街道は、鹿児島県内では鶴丸城下西田橋から熊本県境・境川までの約110km。薩摩川内市の街道保存会は一般参加を募りながら歩く会を催し、このほど2年がかりで踏破した。埋もれた旧道を再発見し、手を入れ、s看板を立てながら歩き続けた。仕掛け人の一人、事務局長の中俣知大さんは建築士。看板はおしゃれで美しく古い道によく似合う。旧薩摩街道筋各地で保存会が生まれ、一本につながった。

街道を歩く保存会メンバー
●街道を歩く保存会メンバー

 「この動きを日本橋までつなぎたい」と中俣さん。夢への第一歩、その可能性を確かめたのは熊本のNPO法人自然を愛する会と薩摩街道を一緒に歩く交流だった。
 熊本の子どもたちはさらに南下し知覧へ。受け入れたのは、武家屋敷近くに藁屋根旧家・矢櫃庵を移築し、子どもたちに道や川、里山で自然や昔を体験させている知覧矢櫃塾。「旅は、旅する人も迎える人も心が弾む」と事務局の射手園武也さん。
 「そうなの。人の行き来、道の行き来こそ。秋の交流会には各地の道守さんがたくさん来て楽しんでほしい。篤姫ゆかりの地への修学旅行のように」と、道守かごしま会議の世話人・田島直美さん。薩摩路は、いま、各地で「燃ゆる思い」に溢れている。


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