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海外道事情
【vol.12】 サンアントニオ 水辺の都市 道それぞれ
田中尚人
サンアントニオと言えば、テキサスは砂漠のオアシス、リバーウォークで有名な水辺の都市であるが、モータリゼーションの進展した米国であるだけに、もちろんそこには道がある。飛行機に乗り空港に着くと、空港バスに乗り換えハイウェイをかっ飛ばし、1時間ほどで市内に到着。アラモ砦で降ろされ地図を頼りに車がばんばん走る幹線道路の歩道をよちよち歩くのだが、いっこうに水辺は見当たらない。と、突然橋を渡っていることに気づき、眼下にサンアントニオ川とクルーズ船、そして川に沿って楽しげにそぞろ歩きする観光客の姿が見えるのである。 あれ、これってどこかに似ている。そうだ、日本の水辺の風景に似てる。倉敷美観地区を大原美術館から見下ろした感じ、九州であれば柳川の水辺を御花の2階から見下ろした時の感覚に近い。もちろん、目に見えているのは原色でやや大振りな米国の風景であるが、空間のしつらえが、歩く人に合わせてつくられている。 リバーウォーク周辺の水辺は、サンアントニオ川本川からは堰によって切り離された旧河道である。過去の大洪水を教訓に本川にはバイパスが設けられ、洪水調節機能はそちらが受け持つ。人々に親しまれてきた旧河道は、隣接する宅地やホテル群はそのままに一段低いレベルで整備が行われ、治水上の制約をクリアしつつ地上レベルの喧噪から逃れ、人々が安心して歩いて楽しめる散策道ができあがったのである。 川を中心とした水辺空間であるが、そこにはまちを楽しむ道が欠かせない。リバークルーズを楽しむ客が、川沿いをそぞろ歩く人々や橋にたたずむ人々に手を振り返す。川の上の人と、道の上の人は、絶妙なバランスでしつらえられた空間で、それぞれが景色の一部となる「見る・見られる」関係を楽しみ、今度はあちらへ行ってみようと楽しげな対岸の自分を想像するのである。 飛行機、バス、徒歩と徐々に低速な移動となるにつれ、景色を楽しむ余裕ができる。お庭の遣り水と同様に、道にも立地や大きさに見合う機能やしつらえが求められる。役割分担とでも言えばいいのか、それぞれの道にはそれぞれの良さがある。大切なのは道と道、道とまちが繋がっていること。ネットワーク化されたシステムが、序列を持って有機的に機能する階層性(ヒエラルキー)を構築していることである。
プロフィール熊本大学大学院 自然科学研究科助教授 田中尚人氏 博士(工学)。京都大学大学院工学研究科助手、岐阜大学工学部講師を経て、平成18年4月から現職。各務原市景観審議会委員、風景デザイン研究会幹事などを務める。専門は土木計画学。