ボストンの春の風物詩がボストン・マラソン。今年で109回目になる世界でもっとも歴史ある市民マラソン大会だ。これを例に、道と民間非営利組織(NPO)とを考えてみたい。ボストン・マラソンは主催がNPO、運営がボランティア。そして市民が盛大に参加する。世界の一流選手が競い合うレースとしてTV中継されるのは全体のほんの一部だ。朝から晩までかけて2万人もの市民が、ボストンの目抜き通りを堂々と走り、それを沿道をうずめつくす数十万人の市民がやんやの喝采で見守る「市民による市民のためのマラソン」であることがこの大会のエッセンスである。
何万人もの市民ランナーが都心の目抜き通りを走り抜ける。まさに「道路」が市民のものになる日。 |
2万人も走れば、最後の人たちは夜になってようやくゴールすることになる。その間、ボストン一番の繁華街の道は、朝から晩まですべて遮断されて市民のためのマラソン・ロードになる。この凄さは、ただごとではない。福岡マラソンも福岡の中心街を駆け抜けるが、道路が遮断されるのは、ほんの数十分に過ぎない。ボストン・マラソンが想像を絶したスケールであることが分かるだろう。

主催はNPO、運営はボランティア。しかもシステムが確立されていて、じつにスムーズな運営だ。驚いた。
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NPOが主催する市民参加のイベントで最も重要なのは行政や警察の協力である。今回、私がもっとも感銘を受けたのは、警察の全面協力ぶりであった。日本では道路はクルマのためにあるかのようであり、渋滞をさけ安全や管理という側面ばかりが強調されて、市民が道を自由に使うことがおそろしく制限されてしまう。これは考えてみればおかしなことだ。
アメリカではNPOによる市民のための活動に、警察や行政が全面協力して奇跡のような大イベントを成功させている。市民のためのサービスという警察や行政の本来のあり方がきちんとここにあることに感動する。マラソンを走る市民と沿道から歓声を上げて応援する市民。「道」を本当に自分たちのものとしている幸福な姿に、われわれも大きく学ぶものがあるのではないか。

この巨大な市民イベントを支えるのが警察と行政。市民のためのサービス機関として全面協力。 |
安立 清史 氏
プロフィール
九州大学大学院人間環境学研究院助教授。専門は福祉社会学およびボランティア・NPO論。ボストンで在外研究中。