アメリカと言うと、誰しも自動車の国との印象が強いことだろう。実際に、都市開発の傾向を見ても、自動車交通に依存した郊外の大規模住宅地やショッピングセンターの開発が続々と行われている。しかし、そうした過度に自動車に依存した都市開発を見直し、環境と歩行者に優しい都市づくりを目指す「ニューアーバニズム(New
Urbanism)」という運動が、近年のアメリカの都市計画分野で大きなトピックスとなっている。
ニューアーバニズムのモデルであるフロリダ州のシーサイドの住宅地内の道路 |
既に、フロリダ州のシーサイドやメリーランド州のケントランンズといった住宅地が、ニューアーバニズムの実際のモデルとして建設されている。そうした事例では、半径1/4マイル(約400m)程度を基本的な規模とし、歩行者優先の道路構成とする伝統的近隣開発の住区の考え方に基づいて計画されている。

メリーランド州のケントランズの住宅地内の歩道とまちなみ景観
|
ニューアーバニズムでは、こうした実践的活動に加え、都市計画や交通工学の専門家らが共同で研究し、住宅地内における歩行者にやさしい交差点部のつくり方などの新しい基準などを提唱している。例えば、一般には交差点部のカーブの半径は、自動車の回転半径に依拠している点を見直し、カーブ半径を従来より小さく設定することを提案している。隅切り部を小さくし、歩行者が交差点の車道部分を横断する距離(横断時間)を縮めるとともに、交差点部に進入する自動車のスピードを低減させることとなり、より歩行者に優しい安全な交差点が形成される。
こうした基準は、「住宅地内での良い交差点とは、横断する歩行者と自動車の運転者との間でアイコンタクトが取れる交差点である」とのユニークな考えに基づいている。そのために、交差点角部の半径が自動車の回転半径に依拠している点を見直し、自動車が交差点に進入するスピードを低減させる交差点部の設計基準などを提案しているのである。
特に、住宅地内の生活道路においては、歩行者優先で歩行者と自動車が安全に共存する基準が求められるが、これは界共通の課題でもある。アメリカで発達した自動車社会ではあるが、そのアメリカにおいて道路の基準の見直しと、新たな基準の研究が実践的な観点から取り組まれているのである。
出口 敦 氏
プロフィール
九州大学大学院人間環境学研究院助教授。1997〜98年米国MIT客員研究員。専門は都市デザイン、都市計画。研究テーマはアジアの都市、道路景観。