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海外道事情

【vol.3】 交通需要マネジメントに取り組む国 シンガポール

小野 正純


ERPゲートには狭域通信システムが設置されている。車に設置されたERP車載器と通信を行い、通行料金を引き落とす。ゲートを通過する際に減速する必要はなく、日本のようにバーもないため、車の流れはとてもスムーズである。

 ガーデンシティ、クリーンシティ、実験国家など様々な異名をもつ国「シンガポール」。車両割当制度、車両購入権、電子式道路通行料金徴収システム(ERP)などの総合的な交通需要マネジメント(TDM)に成功している数少ない国のひとつでもある。なぜ、これほどにうまくいっているのであろうか。
 シンガポールでは建国当初に、現在の交通政策の基本となる土地利用計画・交通計画が一体となったマスタープランが策定されている。この計画では、モータリゼーションの進展による深刻な道路混雑を予見し、TDMを政策の柱とした。この基本政策のもと、車両の総量規制、自動車利用調整、高速道路の建設、大量軌道交通の建設、バス、タクシー企業の再編と効率化、交通結節点整備、パークアンドライドシステムなどの交通対策が実施された。その後、1991年にマスタープランの一部修正が行われているが、基本政策には今でも変更はない。


ETC車載器。現在、車両はETC車載器が搭載された状態で販売されている。

 1975年のエリアライセンス制度(ALS)導入に際しては、国民の交通手段選択の自由に配慮し、同時に代替交通手段となる公共交通の整備・対策も計画的・緻密に実施されている。1998年のERP導入時には、車載器の一定期間無償提供、国境におけるレンタル制度などにより迅速にシステムを立ち上げ、さらにERP導入後は、タクシーGPS機器、主要道路の車両感知機からの交通データを分析し、一定期間毎にERPの課金水準、車種、時間調整を行うなど、最も効率的な運営へのフィードバックが常に行われている。


緑豊かなリトルインディア付近の道路。街路樹が生い茂り、露店もあり、多くの市民で賑わっている。道路は、市民が憩い・くつろぐ生活空間でもある。

 あるシンガポール交通政策担当者の言葉が今でも心に残っている、「Policy never change, but implementation and operation should be changed(不変的政策、臨機応変な実行と運営)」。都市国家、土地の国有化、安定した強い政府、迅速な組織改革など様々な他の有利な条件はあったものの、この言葉が、シンガポールにおけるTDM成功の秘訣と言えるのではないであろうか。

【プロフィール】
会社員(技師)。1997年7月〜1999年9月、シンガポール国立大学留学。工学研究院修士過程 (交通計画学専攻)。世界各地の都市交通モデル、都市交通予測システムを研究。

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